ポスター展を開催しました
久しぶりの投稿です。
なんと人生初の個展を開催しました。
私は商業デザイナーなので、今まで皆さんに見てもらえる「作品」と呼べるようなモノは制作したことがなかったのですが、今回の個展を開催するにあたり、たった3点ですがポスターをデザインしてみました。
リニア中央新幹線の工事によって変わっていく飯田下伊那の風景 を共通のテーマに据えて地元の写真を撮り歩き、それらの写真をベースに制作しています。「変態」というタイトルは、リニアに翻弄される飯田下伊那の街の様子が昆虫のライフステージ(変態様式)に似ているところから着想しました。
「デザインに正解はないが不正解はある」。若いころに師匠からそう教わりました。その意味が少しだけ分かり始めたこのタイミングで、飯田下伊那に住む若い人たちのことを思いながらフンドシをギュっと締め直し、気合いを入れてデザインしてみました。
SG design リーダー 杉本章弘
個展の目的について
まず、リニア中央新幹線への思いを聞かせてにゃ
JR東海が主体となって建設が進められ、国家的プロジェクトとして位置づけられているリニア中央新幹線ですが、この計画の進め方には沿線住民として思うところがあります。
すでに飯田下伊那では長野県駅ができることでリニア歓迎ムード一色となっていて「飯田下伊那が発展する!」と浮き足立っています。
しかし駅の予定地である上郷地区は用地取得が進んでほとんどが更地になっている中で、まだ数軒ですが住み続けている方もおられます。また学校や公園の直下をトンネルが通り、天竜川には大きな橋脚が建てられていますが工事は順調とは言えません。
さらに地元の豊丘村や大鹿村、県境の南アルプスのトンネル工事では山々の生態系に影響がおよびそうで心配しています。仕方なく受け入れた残土置き場の危険性や湧水による水位低下問題なども、地元の住民に不安を与えています。
つまりリニア反対なのかにゃ?
工事はすでに始まっていて、地元住民が容易く「反対」と声をあげられるような状況ではありません。しかし、このまま計画を進めていって、南アルプスの自然環境や生態系は守られるでしょうか。開業後には本当にリニアを推進している皆さんが思い描いているような期待通りの街に発展するでしょうか。ストロー現象で飯田下伊那の若者流出や人口減少加速に繋がらないでしょうか。
もしリニア開発によって何か不測の事態が起きたら、その時は地元の若者たちに尻拭いさせますか?
それに対して私は「NO」と言いたいのです。
個展の目的は何かにゃ?
飯田下伊那に住む人たち、特に若者たちにリニアのことをもっと「自分たちの課題」として捉えてほしい、少しでも未来の街のことを考えてもらう方法はないかと思案していました。
そんなとき「大きな課題に直面したときこそデザインの出番じゃないか!」と思い立ち、ポスター展の開催を決断しました。
今後も定期的にこの個展を開催していきたいです。
このポスター展を行った約2カ月後の2024年4月4日、飯田市のリニア中央新幹線の座光寺高架橋と保守基地の工期が2031年3月まで延期となることが発表されました。地元の沿線住民や地権者の皆さん、駅建設地などから立ち退いた住民の皆さんからは落胆の声が聞かれました。しかし工期の延期はこの工区にとどまらないでしょう。私は、このまま飯田下伊那がリニア計画に依存し続けるなら大変な事態が待っていると思います。いえ、その懸念は今回のニュースで確信に変わりました。
しかし、それでもまだ「夢のリニア」を信じている人がいます。多くの住民がトラバーサにのせられたままなのです。
杉本章弘 ポスター展
「変態 -トラバーサにのせられた伊那谷-」
期間 / 2024年2月5日(月)〜17日(土)
会場 / 松沢カメラ(飯田市知久町3丁目33、営業時間 9時〜18時)
未来の乗り物が運んできた光と影
サイズ:A1 AD+D:杉本章弘 C:ChatGPT3.5